今回はウサギの病気の中で非常に多くみられ命にも関わる『うっ滞』について詳しくお話します。
うっ滞とは
草食動物の消化管は寝ている時以外常に動き留まらずに流れていくのが正常な状態です。
しかし、なにかしらの原因で動きが悪くなったり止まってしまい食べ物が胃や腸に溜まってしまう事を『うっ滞』といいます。
原因
主な原因としては、食事やストレス、病気が考えられます。
●食事
繊維質が不足したりデンプン質を摂り過ぎることで消化管の動きが悪くなり、腸内にガスが溜まりやすくなります。
●ストレス
飼育環境が悪く運動不足や適切な室温管理が不十分だとウサギのストレスとなります。
ストレスは消化管の動きを悪くします。
●病気
特に歯に関する病気や痛みを伴う病気などで食欲不振になり消化管の動きが悪くなります。
症状
症状が軽ければ食欲はありますが、進行すれば食欲不振となります。
そうなると便が通常の大きさよりも小さくなり排便量が減ったり、排便しなかったり下痢便をすることがあります。
このような便の状態が続くと、体重も次第に減少してきます。
また、腸内にガスが溜まり痛みがあるので元気がなくうずくまり動かなくなったり腹痛のためお腹を触られるのを嫌がったりもします。
これらの症状は、ウサギの年齢や体力などによって異なります。
数週間かけて徐々に症状が出てくる場合もあれば、突然発症する場合もあります。
ウサギの様子を日頃からよく観察することが大切です。
毛球症について
胃腸うっ滞によって引き起こされる症状の一つに「毛球症」があります。
ウサギは全ての品種で常に毛繕いを行います。
ウサギが飲み込んだ抜け毛は正常時は牧草などの繊維質と共に消化管を流れ便と共に排出されます。
しかし、胃腸うっ滞を起こすと飲み込んだ抜け毛は排出されず溜まっていきます。
水分不足や繊維質不足、デンプン質の過剰摂取などはさらに抜け毛が排出されなくなる要因となります。
治療
病院を受診するとまずは経過について問診、胃の触診、レントゲン検査、血液検査などを行います。
症状が軽い場合、胃腸を刺激するための消化管の動きを促進する薬や食欲を刺激するための食欲刺激剤を投与します。
腹痛がある場合には鎮痛剤を投与し痛みを緩和させ、ウサギの状態によっては腸内細菌の異常な増殖を防ぐために抗生物質を投与することもあります。
脱水している場合は胃腸内に溜まっているものが流れにくくなるので、水分摂取をさせるために水のみ場を増やしたり、水を温める・味を薄くつけるのも有効です。
内科療法で改善せず大きな毛球や異物が原因の場合は、外科手術を行う事もあります。
治療に対する反応は症状や状態によって個体差があるので、獣医師とよく相談して治療方針を決めるようにしてください。
*強制給餌
胃腸の閉塞を起こしていない場合は『脂肪肝』を防ぐために強制給餌を行うこともあります。
ただし、完全に胃腸が閉塞している場合は強制給餌を行ってしまうと、逆に状態を悪化させてしまったり、最悪亡くなってしまう可能性もあるので自己判断でおこなわず病院で必ず相談するようにしてください。
予防
ウサギの『うっ滞』を防ぐためには、何よりも十分な繊維質を含む食事を与える必要があります。
牧草もたっぷり与えるようにしてください。
◇適度な運動、室温管理を心がける…ストレスを軽減させる飼育環境を整える
◇適度なブラッシングをこまめにおこなう…抜け毛をたくさん飲み込ませない
◇サプリメントやおやつなどを与える場合、
でんぷん質が多すぎるものを与えない…胃腸に負担がかかってしまう
日頃からウサギの食欲や便の状態に注意し、少しでも異変を感じたときには早めに動物病院を受診してください。