賢くてお喋り上手なヨウムや人懐っこいコバタンは人気の高い鳥さんですが、乱獲や生息地の開発等の為、野生での生息数は激減しており、「ワシントン条約附属書I掲載種(絶滅のおそれのある種で取引による影響を受けるもの)」となっています。
ヨウムは、2016年に「附属書II掲載種」から「附属書I掲載種」への移行が決定され、2017年に国内法である「種の保存法」の規制を受ける種となりました。現在、インコ・オウム類の多くは「附属書II掲載種」となっており、今後同様に「附属書I掲載種」になる可能性もゼロではありません。
鳥さんに関する法律や規制について、あらためて知っておきましょう。

【ワシントン条約とは】
国際条約。正式名称は『絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約』。
英文表記の頭文字から『CITES(サイテス)』とも呼ばれます。
⇒経済産業省:ワシントン条約について(条約全文、付属書、締約国など)

【種の保存法とは】
国内法。正式名称は『絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律』。
希少野生動植物種の指定、取り扱いの規制や生息地等の保護等に関して定められています。
規制対象となる動植物種のうち、「国際希少野生動植物種」に含まれるものに、「ワシントン条約附属書I掲載種」「二国間渡り鳥等保護条約に基づいた種」等があります。
対象鳥種はこちらで確認できます。⇒環境省:国際希少野生動植物種一覧

「種の保存法」により「国際希少野生動植物種」とされている種については、譲渡し等が原則禁止されていますが、このうち「ワシントン条約附属書I掲載種」に関しては、登録された個体であれば譲渡し等が可能となります。

登録が必要なのはどんな場合?

「国際希少野生動植物種」としての規制適用日以降にペットショップから迎えた個体は、すでにペットショップで登録されているはずです。(例えばヨウムなら、2017年1月2日以降に迎えた場合)
お迎え後は、30日以内に登録票を自分の名義に変更する必要があります。

では、規制適用日より前から飼育していて、登録票を持っていない飼い主さんは?

まず、飼育・所持については、登録は必要ありません。
有償・無償を問わず、譲渡し等(売る・買う・あげる・もらう・貸す・借りる等)を行う場合や、販売目的での陳列・広告をする場合は登録が必要です。
適用日より前から飼育している飼い主さんが、他人に譲らずそのまま飼育し続けるのであれば、登録は不要ということになります。

しかし、ヨウム等の大型鳥類は寿命も長く、50年以上生きる場合もあります。
もし生活環境の変化や病気などで飼い主さんが飼い続けられなくなったとき、登録をしていないと、知人に預ける・里子に出すということもできなくなってしまいます。鳥さんの将来の安心のために、登録をおすすめします。(未登録での譲渡等は違法です!)
登録する場合は、ご自身での申請が必要です。

未登録では何ができないの?

登録をしていないと、どんなことができなくなるのでしょうか?
登録窓口の『一般財団法人 自然環境研究センター』へお話を伺いました。

●未登録ではできないこと(登録票が必要)

  • 知人に譲る、里親を探して譲る
  • 知人に一時的に預ける
  • ペットホテルに預ける
  • 飼いきれなくなり、他人に預ける(業者、個人問わず不可。特例は認められません)

●こんな場合はどうなるの?

【家族に譲る場合】
家族に「譲る」ことは、未登録ではできません。登録票が必要です。
飼い主さんが亡くなり、家族へ「相続」する場合は、譲渡し等にあたらないため、未登録でも可能です。
ただし、「生前贈与」は譲渡し等にあたるので、家族間であっても登録票が必要になります。

【引っ越しや避難をする場合】
飼い主さんが未登録個体を連れて引っ越しをすることは、問題ありません。(所有権の移動ではないため未登録でも可能)
災害時に避難をする場合、避難所に連れて行けず、ペットシェルターなどに預けなければならなくなることも考えられます。この場合は「譲渡し等の禁止」の適用除外となるため、登録票がなくても預けることは可能です。ただしその場合、事後30日以内に登録をする必要があります。

【病院へ預ける場合】
診療の為入院する場合は、「譲渡し等の禁止」の適用除外となるため、未登録でも問題ありません。
病院のペットホテルサービスでの預かりは、診療以外の目的となるので、登録票が必要です。

登録申請の手続き

登録窓口は『一般財団法人 自然環境研究センター』です。
まずはお電話でお問い合わせください(必須)。その後書類作成となります。
⇒国際希少種の登録・製品認定 | 自然環境研究センター

「規制適用日前に所有していたことを証明する書類」として、日本に輸入された際の通関書類等が必要になりますが、手元にない場合は別の書類で代替できる場合もあるようです。自然環境研究センターへ問い合わせてみてください。

登録後、変更手続きが必要になることは?

登録した個体を他人に譲渡した場合は、譲り受けた(もらった・買った)側が、「譲受けの届出」を出す義務があります。この手続きは「名義変更」のようなもので、これを届け出ていないと、例えば登録票を紛失してしまった場合に再交付が受けられない等、不都合が生じます。
登録者が引っ越した場合やご結婚等で氏名が変わった場合には、「住所氏名変更の届出」を出す義務があります。
また、登録した個体が亡くなってしまった場合は、登録票を返還する義務があります。
⇒個体登録に関するもの | 自然環境研究センター

新しく規制対象になる鳥さんもいれば、規制の対象からはずれる鳥さんもいます。
コキンチョウやミカヅキインコ等は「二国間渡り鳥等保護条約」対象鳥種のため規制されていましたが、2017年1月2日、「種の保存法」に関する「施行規則の一部を改正する省令」によって『繁殖個体に限り規制対象外』となりました。

また、「種の保存法」改正によって、今後は登録の更新も必要になります。(2018年6月1日施行)
これからも法律は改正される可能性があり、規制の状況が変わっていくかもしれません。
家族である鳥さんと安心して過ごすためにも、こうした情報に気を付けておくことが大切です。