今回はウサギによく見られる『斜頸』について
原因・症状・治療法などについてお話ししていきます。

斜頸

『斜頸』とは首をかしげているように頭部が傾く症状のことです。
「斜頸」という病気があるのではありません。

寄生虫や細菌感染など様々な原因によって平衡感覚を司る三半規管が侵され斜頸が起こります。

斜頸の症状には、首がわずかに傾く軽度のものから首が90度以上傾く重度のものまで存在し、首は原因となる中耳炎や内耳炎を起こしている方に傾きます。またエンセファトリゾーン症で脳の中枢機能が侵された場合も斜頸が起こります。

首の傾きが酷くなってくると旋回(*₁)や回転(*₂)、眼振(*₃)などの斜頸と併発する症状が現れ、立ち上がることが困難になります。これらの症状によって飲食することが難しくなり、脱水や胃腸の動きが悪くなってしまいます。胃腸や肝臓などの臓器がダメージを受けてしまうと、最悪の場合亡くなってしまうこともあります。

万が一、斜頸を発症してしまった場合は速やかに適切な治療を行う必要があり、また家庭での看護も大切になってきます。
ウサギたちを斜頸から守るためにできる予防法としては、原因と考えられる病気の治療を行ってあげてください。治療することに加えてご家庭の飼育環境を衛生的に整えてあげましょう。

 

*₁旋回…斜頸で傾いた首を軸としてくるくる回ってしまう状態。体の平衡感覚を失い、まっすぐ歩くことが
できない。
*₂回転…バランスがとれずくるくる回る状態。立ち上がることができず、横向きに転がり続けてしまう。
体がコントロールできずパニックになる→ケージの金網などにぶつかってしまうこともあるので、
クッションなどを使用して怪我の予防をしてあげましょう。
*₃眼振…眼球が本人の意思と関係なく、水平方向または垂直方向に動いてしまう状態です。
場合によってはくるくる回ることもあります。

斜頸につながる病気

主にエンセファリトゾーン症(中枢系)、中耳炎・内耳炎(末梢性)などがあります。
まずはこれらの病気について見ていきましょう。

病名 症状 診察・治療 予防・注意すること
エンセファトリゾーン症 エンセファリトゾーン原虫が脳や腎臓に寄生することで発症する病気。

経口感染や胎盤感染(母子感染)によって発症する。

多くは無症状。

血液を採取し、抗体検査を行う。

➡駆虫薬を投与(診断が確定できない場合、2~3週間後に再度検査)。脳の炎症を抑えるためにステロイドを用いることもある。

・体内に侵入したエンセファリトゾーン原虫は尿中に排泄される。

➡トイレ掃除をこまめに行うことで予防することができる。

・犬、猫、げっ歯類、人にも感染する(感染率が高い)。

・ストレス、気圧の変化、病気などが引き金となり発症しやすい。

中耳炎 中耳(鼓膜から内耳まで)がパスツレラ菌などの細菌により炎症を起こす病気。

多くは無症状。膿状の液体が排出されることもある。

レントゲン検査やCT検査で感染を確認し、原因菌を特定する。

➡抗生物質や抗炎症剤の投与。膿が溜まっている場合、耳洗浄や外科手術を行うこともある。

・外耳炎、鼻炎と診断された場合は早期に治療する。

・頭を振る、耳を掻くなどのしぐさが多い場合は要注意。

・パスツレラ菌は口や鼻から侵入するため、適切な飼育環境を整える。

内耳炎 内耳(中耳の奥にあり三半規管や蝸牛がある)が炎症を起こす病気。外耳炎から進行することもある。

平衡感覚の異常により、斜頸、運動失調、眼振が見られる。

中耳炎の治療と同様。 ・外耳炎、鼻炎と診断された場合は早期に治療する。

 

・体の自由がままならなくなると食欲低下につながることもある。

その他、頭部外傷や脳の血管障害、耳ダニの侵入なども斜頸の原因になります。

家庭での対処法など

 

◇軽度の斜頸
体のバランスが取りにくく、自分で毛づくろいすることができません。
そのため、週1回はブラッシングを行い同時に体の異常がないか確認することで、
新たな病気の早期発見・早期治療につながります。
また首の傾きによっては立位することが困難になるので、ネックピローなどの低反発枕や
低反発マットレスを使用します。汚れたときに洗うことができるカバー付きのものがオススメです。

◇旋回、回転している
かじり木などのおもちゃやトイレはケガの原因になるかもしれないので撤去します。
ケージ内で動き回りケガをしないように、タオルやクッションなどを丸めて動き回れる範囲を
制限しましょう。またケージよりも狭い犬や猫のキャリーケースを利用して生活環境を限定することも
有効です。
食事などは自分で飲水や食事が難しくなるので定期的に水や強制給餌をする必要があります。

◇寝たきりの状態
筋肉や関節が固まらないようにマッサージを行ってあげましょう。
普段動かさない足を優しくゆっくりと曲げ伸ばします。
床ずれが気になると思いますので床にはクッション性があるマットなど柔らかい素材のものを
敷くようにします。
排泄の事を考えると吸水性のあるものかペットシーツを敷いて排泄後は早めに新しいシーツと交換すれば
清潔に保つことができます。
食事などはこの場合も定期的に水や強制給餌をする必要があります。
吉川飼育場の場合ですが、食欲があり自力で食べられる子に対してはフードを頭部近くにマットや
タオルを敷いてその上にばらまいて与えていました。
自分の好きなタイミングで食べる事ができて満足そうでした。
それぞれその子に合った方法を見つけてあげてくださいね。

上記で紹介した対処法以外に、『ウサギの介護』にも参考になる情報が掲載されているので併せてご覧下さ
い。

いかがでしたか?
斜頸は早期に適切な治療を行うことで、良くなる可能性があります。
普段の様子に違和感があれば早めに動物病院を受診するようにしましょう。