ウサギの消化管はとても長く、約8m程にもなります。人間の消化管は約9mですが、ウサギ(体長約35cm)と人間(約170cm)の体の大きさの差を考えると、どれだけウサギの消化管が長いかがわかりますね。
この長い消化管は、繊維質の多い食べ物を消化するためのものです。けれどウサギは、繊維質をそのまま消化吸収できるわけではないんです。
では、どんなふうに消化しているんでしょうか?
消化の流れを見てみましょう。

消化のしくみ

①胃
食べたものは食道を通って胃に入ります。胃から小腸へ、分解された内容物が少しずつ送られます。
ウサギの胃は深い袋状になっています。胃の入り口となる「噴門」は狭く、胃の上部についていて、開閉する筋肉が発達しています。このため胃に入ったものは逆流することができず、一度飲み込んだものを「吐く」ことができないのです。
ウサギに毛球症、うっ滞が多いのも、このような胃の構造が関係しています。

②小腸(十二指腸・空腸・回腸)
繊維質以外の主な栄養は、小腸で吸収されます。
流れてきた繊維は、回腸の末端部にある「正円小嚢(しょうえんしょうのう)」という器官で分離され、粗い繊維と細かい繊維で行き先が分かれます。粗い繊維は大腸(結腸)へ、細かい繊維は盲腸へ行きます。

③大腸(結腸)
結腸では、粗い繊維と細かい繊維をさらに分離します。ここで分離された細かい繊維は、消化管を逆走して盲腸へ移動します。
残った粗い繊維は、結腸・直腸を通り、硬便(通常の丸い便)として排泄されます。

④盲腸
盲腸にいる微生物たちが繊維質を分解し、栄養として吸収できるように盲腸内で発酵させます。これをもとに「盲腸便」が作られます。盲腸便はたん白質やビタミンが豊富で、これを食べることで、ウサギはしっかり栄養を摂れるしくみになっています。
盲腸便は結腸、直腸を通って肛門から排泄されます。

⑤直腸→肛門
繊維質の粗い粒子は、硬便(通常の丸い便)になり排泄されます。ほぼ繊維質の塊なので、あまり臭いもありません。
盲腸便は、通常、ウサギが直接肛門に口を付けてそのまま食べます。「食糞」とも言います。

●盲腸便って?

盲腸便は通常の便に比べてやわらかく、ねばねばとした粘膜に包まれており、ブドウの房のようにひとかたまりになっています。
ウサギは、肛門に直接口を付けて、盲腸便を噛まずに飲み込みます。その後、盲腸便はしばらく胃にとどまり、時間をかけて発酵します。この間、ウサギの強い胃酸で栄養成分が変化してしまわないよう、粘膜が盲腸便を守っています。
その後小腸で粘膜が溶け、盲腸便はようやく栄養として吸収されるのです。

肛門に口を付けて直接食べてしまうので、盲腸便を見たことがない飼い主さんもいるかもしれませんね。もしウサギの口が「なんだかにおう……」ということがあれば、食糞したばかりだったのかも?
「軟便かなと思ったら盲腸便だった」ということもあるようですが、盲腸便をよく見かけるという場合はちょっと注意。ウサギが盲腸便を頻繁に食べ残しているときは、食事で摂っているたん白質等の量が多いのかもしれません。食事の内容を見直してみて、ペレットやおやつが多いようなら、少し減らして様子を見てみましょう。
栄養が別で摂れているならいいのでは?と思われるかもしれませんが、盲腸便はビタミン等の栄養が豊富で、しっかり食べてもらいたいものなのです。
また、太りすぎで肛門に直接口を付けるのが難しくなっていると、食糞しにくくなるので要注意!

 
排泄の際に腸のぜん動を促す硬便も含めて、ウサギにとって、便はとても重要なものです。
腸内の健康管理には十分気を付けてあげましょうね!